メンテナンスに使うグリスはどう選ぶ?

バイクのメンテナンスを自分で行いたいと考えている方にとって、必要な道具やケミカル用品は欠かせません。その中でも「グリス」は特に重要なアイテムの一つです。グリスにはさまざまな種類があり、それぞれ用途に適したものを選ぶことで、部品の保護や動作の改善につながります。この記事では、グリスの基本的な役割から用途別の選び方までを解説します。


グリスの役割とは?

グリスは潤滑剤の一種で、主に部品同士の摩擦を軽減し、スムーズな動きをサポートする役割を果たします。また、摩耗やサビを防ぎ、部品の寿命を延ばす効果も期待できます。

バイクには多くの可動部分があり、例えば以下のような箇所でグリスが使用されています:

  • ハンドルステムやスイングアームのピボット軸
  • ホイールのアクスル(車軸)
  • クラッチやブレーキレバー、シフトペダルなどの操作部品

これらの部分に適切なグリスを塗布することで、動きが滑らかになるだけでなく、部品の摩耗や劣化を予防することができます。


グリスの選び方:用途に応じた種類の選定

1. 万能グリス(汎用グリス)

「万能グリス」は、幅広い用途に使用できる汎用的なグリスで、最初に用意したい基本のグリスです。主成分はリチウムせっけんやウレア系などで、金属製の部品同士の摩擦軽減や潤滑に適しています。

万能グリスは特に以下の用途に適しています:

  • レバーの軸やホルダー部分
  • ベアリング類の潤滑

価格が比較的安く、どんな場面でも使いやすいのが特徴です。特に初心者の方にはおすすめの選択肢です。


2. シリコングリス

ゴムやプラスチックなどの樹脂製品に対応したグリスが「シリコングリス」です。ゴムやプラスチックを傷めることがなく、オイルシールやOリングの組み付け時に役立ちます。また、高温に強い性質を持ち、電気を通さないため、電気系統の腐食防止にも使われます。

具体的には以下の用途に最適です:

  • フロントフォークのインナーチューブの動作改善
  • ヘルメットのシールドの取り付け部分の潤滑

ただし、金属同士の摩擦が激しい箇所や強い負荷がかかる場所には向きません。そのため、用途をよく確認して使用しましょう。


3. モリブデングリス

高い極圧性能を持つ「モリブデングリス」は、二硫化モリブデンを含む特殊なグリスです。大きな荷重がかかる金属部分の潤滑に優れており、特にエンジンの分解整備やトランスミッションの組み立て時に使用されます。

以下のような場面で使用されることが一般的です:

  • トランスミッションの軸受け部分
  • 高負荷がかかるギアの組み付け

ただし、ゴムや樹脂製品、アルミなどの柔らかい素材には使用しないよう注意が必要です。粒子が部品を削る可能性があるため、使用箇所を慎重に選びましょう。


4. カッパーグリス

高い耐熱性を持つ「カッパーグリス」は、マフラーのフランジボルトやナットなど、熱が加わる部品の焼き付き防止に適しています。また、ブレーキパッドの鳴き防止にも効果を発揮します。

主な用途としては以下のような箇所が挙げられます:

  • 高温になるネジ部分の保護
  • ブレーキパッドの背板とキャリパーの接触面

ただし、ゴムや樹脂製品には不向きである点に注意しましょう。塗布する際は、グリスが摩材やディスク板に付着しないよう細心の注意を払い、極少量を薄く塗布するのがポイントです。


グリスを使う際の注意点

1. 塗布前の清掃

グリスを塗布する前に、部品をしっかりと清掃することが重要です。汚れや砂粒、金属粉が付着したままだと、グリスに混ざって研磨剤のような働きをし、部品を削る原因になります。

2. 適量を塗布する

グリスは「多ければ良い」というものではありません。部品同士の接触面に適量を塗布し、余分なグリスはしっかり拭き取ることが必要です。余分なグリスがホコリや泥を吸着すると、かえって動作不良や摩耗を引き起こします。また、タイヤやブレーキに付着すると非常に危険です。


まとめ

グリスはバイクメンテナンスにおいて欠かせないアイテムですが、その選び方や使い方には注意が必要です。「万能グリス」「シリコングリス」「モリブデングリス」「カッパーグリス」といった種類ごとに用途を把握